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館長 クラゲを捕まえる


一昨日と昨日の2日間つづけて舟を出してクラゲを捕まえに行ってみた。副館長の隣に乗せてもらったのではない、自分で採集舟を操縦しての船出である。

こ こ2~3年はそんなことはなかった。何だか年を取った感じがして舟を出すのが億劫になっていた。若いときには重い木造の舟を櫂1本で手漕ぎして、2kmも 離れた暗礁までも行って釣りをしたものだがもう駄目だ。疲れそうだなと思うとパソコンの前から動かないのだから、寄る年波には勝てないという事だ。

そ の自分が若い職員に誘われて「おーんだば行くがー」と返事したのだから、我ながら可笑しかった。70歳の曲がり角をすぎて少し体力が戻ったのかも知れな い。年を取ったと言っても海を見る目は昔のままだ。海が穏やかに凪いでいれば出たくなる。タナゴやメバルの20~30も釣ってやろうかと気も起こる。

クラゲが相手でも同じだ。あの日は若い女性飼育係と二人で、引き上げてある舟を押して海に浮かべ、久しぶりに50馬力の船外機のスイッチをまわした。4サイクルのエンジンは音が小さく静かに安定した回転音がしている。

駐車場の向こうにある港は100mほどしか離れていない。「いやークラゲに出会って観光ルートから外れたここも条件が一変したな。」気持ちよく今泉の港から出航した。日本広しと言えどプライベートの港を持っている水族館は他に思い当たらない、いい気分だ。

まず目指すのは800m沖にある離岸堤だ。水深が10mある岸壁に沿ってクラゲが居るはずであったが、しかしだめだった。最上川からでも来たのか川の水が入ったことを示す、特有のワタごみのような浮遊物が無数に漂っていた。

よく見るとワタごみの間にもっと細かな何かが無数にうごめいていた。これは俗に夜光虫と呼ばれているプランクトンである。これが災いしたようだったクラゲは見えなかった。せっかく意を決して船出してきたのだが見放されたようだ。

離岸堤を3つ回っても壊れたカブトクラゲが一つ漂っていただけだった。クラゲって奴はいないときには影も形もない。しかしいつ大量に現れるか分からないのもクラゲの特徴である。

そして翌日矢張りいたのである。岸壁には釣りの方が何人も上がっていた。船が近づいてクラゲを探していると「あそこにいる」と指さして教えてくれた。4m上の岸壁から見えるのは多分傘に縞模様のあるアカクラゲだろう。

以 前ここは私の専用の釣り場だったのだ。水族館の採集船で押し渡っては細い庄内竿を見事に曲げてクロダイを釣っていた。「どうです、何か釣れましたか」「ク ロダイが1匹釣れました」こんな会話も楽しみの一つだ。他にはオワンクラゲ、サビキウリクラゲ、チョウクラゲが結構いた。これを展示すればお客様が喜んで くれるだろう。

アカクラゲも数匹持ち帰ったが、小魚にでもつつかれたのか傘が痛んでいたり、口腕が無いものが多い。これは展示には向かな いから繁殖に使おう。魚ではなくたってなんでも捕まえるという事は楽しいものだ。さっきより気分がよくなった。これで1週間はいい気持ちで仕事ができる。

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